杉田直彦 先生 生産システム

目次

このグッドプラクティスは,2020年度オンライン授業情報交換会「第21回 ライブ授業でのインタラクションを活発化する工夫」にて,杉田先生にご登壇いただき,内容をご紹介いただきました.学内限定でランチョンの映像を公開しておりますので,ぜひご活用ください.

授業の基本情報

授業名  : 生産システム
開講部局 : 工学部
対象   : 学部生
学生数  : 約100名
形態   : 全てリアルタイム
利用したツール :

教員の基本情報

杉田 直彦 先生

杉田 直彦 先生
工学系研究科
教授

学生のコメント: この授業が良かった理由

学生 A のコメント
授業中に学生の要望等に柔軟に対応してくださった。

学生 B のコメント
Comment Screenなどの、反応や質問などが匿名で気軽にできるツールの利用により、学生と先生の間の距離感が近く感じられ、理解もしやすかった。(SNSのように好き放題呟くと無法地帯になるため、学生側の節度は重要だと感じた。)

授業をオンライン化するにあたって心がけたこと

授業をオンライン化するにあたって最も心がけたことは、いかにして学生と教員の双方向的なコミュニケーションを図るかということでした。

オンライン授業が始まるまで自分はZoomを使ったことがなく、手探りの状態でオンライン授業の準備を進めていました。初回、実際に授業をしてみると、授業自体はできたのですが、学生の顔が見えないことに思いのほか戸惑いました。学生が笑っているのか苦笑いをしているのかも分からず、Zoomのチャット機能を使って質問を募っても、ほとんど返事がありませんでした。初めは質問の数を増やしてみたりもしたのですが、記名だからか返事が増えることはなく、学生とのコミュニケーションに危機感を覚え始めました。これではパソコンの向こうで学生が寝ていても気が付かないぞ、と(笑)。

それから、様々なツールを試し、Comment Screenを導入することにしました。授業を重ねるうちに、少しずつ学生との距離感も近付き、「馴れ馴れしく」なってきました。この授業は、実習を理論的に支えるためのもので、ある意味とても地味な授業です。その授業をいかに楽しんでもらうかという意識が前提としてあったように思います。

Comment Screenを使った授業のイメージ
学生からのコメントがスライド上に表示されている

工夫したところ

Comment Screenを活用して、学生とのコミュニケーションをとった

先ほどお話しした通り、初めてのオンライン授業は、自分にとって雲を掴むような体験でした。なんとかして学生から反応を貰いたいと考えて導入したのがComment Screenでした。

我々の専攻では、会議の度にオンライン授業の情報共有や実践報告がされていました。そこで、学生とのコミュニケーションツールとして紹介されていたのがSlidoとComment Screenです。自分自身でも試してみたところ、Comment Screenは、デザインが動画のコメントのようで、学生も楽しく使えるのではないかと考えて導入しました。

Comment ScreenもSlidoもそうなのですが、このようなツールは匿名で使えるということが非常に重要だと思います。特に、後期課程だと人数も少なく、お互いが顔見知りであることもあって、名前を出して質問を送ることに抵抗がある人も多いようです。逆に、オンライン授業になったことで、学生がバラバラの場所で授業を受講するため、タイピングをしていることさえも他の人には分からず、いっそう匿名での質問がしやすくなったのではないでしょうか。

実際にComment Screenを導入して授業をしてみたところ、反応の数が大きく増えたのでとても安心しました。それからは、いかに反応しやすい問いかけをするかの工夫を始めました。

Comment Screenを使うと、画面共有をしているスライドに重なる形で、学生のコメントが表示されます。そのため、多くのコメントが来れば来るほど賑わって面白くなります。初めの頃は、例えば物の名前を聞くであるとか、長めの質問をするであるとか、答えるためにある程度の考慮が必要な問いかけをしていました。しかし、それでは反応できる学生が限られてしまい、投稿されるコメントの数も少なくなっています。そのため、比較的簡単な問題、例えば「大きい」か「小さい」かの二択の問題を提示して、直感的に反応できるようにしました。たまには、全員が正解できるような問題を出して盛り上げるということも。コメントが多く流れると、実際に共有している画面がコメントで埋め尽くされるため、授業の盛り上がりを可視化することができます。学生に授業に参加している感覚を持ち続けてもらうために、問いかけの難易度やバランスを工夫しました。

Comment Screenの一覧画面。これまでの学生のコメントが一覧できる。

MATLABの演習を導入した

去年、大学院入試を見据えた座学の授業を行ったところ、評判が良くなかったため、実際に手を動かしながら、楽しんで受講できる授業を作ろうと考えて、オンライン授業になる前からMATLAB演習の導入を検討していました。学生に渡されている学科のパソコンにはMATLABが既にインストールされていて環境も整っているため、非常にスムーズに導入することができました。

MATLAB演習は、出席も兼ねた毎週の課題としました。MATLABは、機械系だとこれからずっと使うことになるため、慣れてほしいという意図もあります。例年は、実際にスターリングエンジンを作るという演習が別にあるのですが、今年は座学になってしまい、実際に物を作るという体験をしてもらうことができません。学んだ理論を使って画面上にグラフを書くということだけでも、手を動かして演習をしてもらいたいと思っていました。課題が多いと聞いていたため、演習の分量を調整したり、授業中に画面共有をしながら手助けをしたりといった配慮を行いました。

学生と相談をしながら授業を作り上げた

Comment Screenを使うことで学生とのコミュニケーションが取りやすくなったため、授業や試験の方法は、学生とも相談しながら決めていきました。

学生から意見を貰ったことの一つとして、板書の方法があります。最初は、重要な点を空欄にしたスライドを作り、画面共有をしながら穴埋めをしていましたが、画面共有では、板書と異なり、スライドをめくると前のスライドに書き込んだ内容が見えなくなってしまいます。そのため、Comment Screenでの学生の反応を見ながら、画面送りのタイミングを決めていました。また、メモが追い付かなかった箇所があったらその部分だけ講義資料を渡すようにしたところ、対応しきれないほどの連絡が来ました。それからは徐々に穴埋めの量を減らして、学生がメモを取る時間を確保できるようにしました。「穴埋めを無くしてください」と言われたこともありましたが、「そうしたら、君たちは眠くなるんじゃないか」と返したら、納得してくれたみたいなこともありましたね(笑)。

苦労したところ

実物を見せられず、イメージを持ってもらいにくい

対面授業では実際に作られたものを見せることができますが、オンライン授業ではそれができません。例えば、金属を削るということがどんなに大変なことか。数式にすると簡単に見えますが、実際に削られた金属を見ると、その困難さが分かります。

また、オンライン授業では動画を綺麗に見せられないことも苦労した点です。例年だと、例えば、絶対に削れない金属と絶対に削れる工具で対決させるバラエティー番組を見せたりしていましたが、オンライン授業ではうまく見せることができません。なるべく綺麗に見せられるように工夫もしましたが、なかなか使いこなせませんでした。

そのため、できるだけ口頭でイメージを持ってもらうように工夫をしました。例えば、切り立てのカッターの刃と、長く使ったカッターの刃では全く切れ味が違うであるとか、包丁で魚を切る時の切り方であるとか、できるだけ身近な分かりやすい実例に置き換えて説明をしていました。本当は、できるだけそのまま理解してもらいたいと思っていますが、少なくとも「分かったつもり」になってもらうことを目標にしたことで、オンライン授業がやりやすくなりました。

今後のオンライン授業に向けて

学生が参加しやすい授業を作る

自分なりに工夫をしてオンライン授業を設計したことで、オンライン授業と対面授業のそれぞれの良い点がよく分かりました。今回の授業での一番の発見は、匿名にすると、質問を投げ掛けたときの学生のレスポンスが非常に活発になるということです。オンラインであっても対面であっても、学生の匿名性を担保し、発言しやすい環境を作ることが大切になると考えています。これまでの対面授業では、教室の前方の席に座っている人に声を掛けることが多かったですが、例えばSlidoを使ってみるなど、今後対面に戻っても今回のオンライン授業の経験を生かしたいと思っています。

授業の形態に合わせて、オンライン授業の方法を模索する

また、オンライン授業では授業の形態に合わせた授業設計が必要であることも分かりました。今回の「生産システム」の講義は、学生にイメージを持ってもらうことが大切だったので、学生に質問を投げかける機会も多く、Comment Screenが非常に盛り上がりました。しかし、Aセメスターに担当する数学の授業は、こちらから話すことが多く、学生に投げかける質問が少なくなるため、今回と同じようなオンライン授業はできないと思っています。また、人数が多い授業では、Comment Screenを使うとコメントが多くなりすぎて対応が難しくなるかもしれません。授業の形態に合わせて、他のツールも試しながら、オンライン授業の方法を模索しようと思っています。

参考情報

本授業の概要(シラバスより)

加工方法および工作機械を「ものづくりの流れ」に着目しながら理解する.これまでに学んだ生産の技術や設計活動が生産システムとどのような関係にあるのかを理解する.そして,生産システムにおいて中核となる工作機械を取り上げて,その基本構造および技術要素と高精度化技術について学ぶ.

授業内容

  1. ものづくりと工作機械
  2. 工作機械による形状創成,運動誤差
  3. 工作機械の振動問題
  4. 工作機械の熱変形
  5. 加工プロセス
  6. オークマ 特別講義: 企業の方に講演をいただきました
  7. 生産管理
  8. 工作機械の設計
  9. 工具経路

具体的な授業1回分の流れと方法

授業を行うごとに、前回の反省を踏まえて少しずつ時間の使い方を変えていましたが、基本的には、10分間の講義と5分間の実習をセットにして繰り返していました。5分間の実習の時間の内容は、MATLABの課題を説明したり、学生の質問を受け付けたり、講義に関連した動画を見せたりと様々でしたが、講義の合間の休憩時間を確保することで学生の集中力が途切れないように工夫したという側面もあります。

時間 カテゴリ 説明
10分 講義 授業トピック(難しい話)
5分 演習 Matlab の課題を提示・質問タイム
10分 講義 授業トピック
5分 演習 質問タイム
10分 講義 授業トピック
5分 演習 動画
10分

評価方法

期末にはZoomを用いたオンラインでの筆記試験を行い、毎週のMATLABの課題と合わせて成績を出しました。Zoomを用いたオンライン試験の方法は本学でも様々に検討されていましたが、私の授業では、カメラをオンにしてもらった上で、他人との相談以外は全て認める、持ち込み可の試験としました。ルールを設定しても、管理が大変になると考えたためです。

例年は持ち込み不可で行っていましたが、問題の分量を増やし、検索をすると時間が足りなくなるようにしたこともあり、比較的正確に学生の理解度を図ることができたと思っています。試験が終わった後には、時間が足りなかったというクレーム(?)が山のようにありましたが、実際に採点してみると学生の理解度は例年よりも高かったように感じています。

問題の配布と答案の回収にはITC-LMSを使いました。問題の配布は、前日にパスワード付きのPDFファイルをITC-LMSにアップロードし、当日にZoomのチャットでパスワードを配布するという形で行いました。答案の回収は、大問一問ごとに写真を撮影し、ITC-LMSからアップロードしてもらいました。同じような形で試験をしている授業も多く、比較的スムーズに実施することができました。一方、一般的でない拡張子で提出した学生が何人かいて、うまくファイルを確認することができなかったため、提出に最初気付かなかったというアクシデントが発生しました。例えばPDFなど、提出形式を指定した方が良かったかもしれません。