生成AIの提供方針に関するアンケートの結果等について

2024年4月

概要

東京大学では,生成AIツールの利用を一律に禁止することはせず,教育・研究等における利用の可能性を積極的に探るとともに,活用上の実践的な注意を発信していく方針を取っています.この方針のもと,これまで構成員向けに「生成AIチャットサービスの実験的な提供」「Microsoft Copilotによる生成AIチャットの提供」を行ってきていましたが,こうした取り組みについて今後の運用を検討するため,生成AIチャットの利用に関するアンケートを行いました.

このたび,その結果を集計しましたので,公開します.また,「生成AIチャットサービスの実験的な提供」の申請フォームでご記入いただいた情報を集計したものについても,あわせて公開します.アンケートにご協力いただきました皆様に改めてお礼を申し上げます.

なお,アンケート結果に基づいて生成AIサービスの提供に関する運用を検討し,「当面の全学構成員向け生成AIサービス提供方針について」でお知らせしていますので,ご参照ください.

アンケートの趣旨について

今回のアンケートは,大学として全学的な生成AIの利用環境を整備するにあたっての方針を検討することを目的としていました.全学的に必要な環境がどんなものであるか把握するため,どのような方がどのような目的でどのような生成AIサービスを利用しているのか,を中心に尋ねました.

加えて,アンケートを実施した2024年3月は,全学構成員向けの生成AIサービスを提供していくにあたり,運営環境に変化が生じていたタイミングでした.Microsoft Copilotによる生成AIチャットの提供を開始し,クラウドサービスによる生成AIの利用が可能となりました.その一方で,「Chatbot UI」による生成AIチャットサービスの実験的な提供については,運用開始からおよそ半年が経過して,大学が自らサーバを構築・維持する運用負担の観点や,OpenAI社のAPIの利用に関する費用負担の観点などから,継続に課題が生じてきていました.こうした状況を踏まえ,直近の方針を検討するため,個々の生成AIサービスの利用の有無などについても詳しく尋ねました.

なお,たとえば大学全体での生成AIの普及の状況や,生成AIに対しての賛否の意見の状況などは,このアンケートの主な目的には含まれていません.

「生成AIチャットサービスの実験的な提供」申請フォームの集計結果

まず,「生成AIチャットサービスの実験的な提供」の申請フォームでご記入いただいた情報を集計した結果を紹介します.

申請フォームを複数回送信したアカウントについては,最後に送信した情報を利用して集計しました.集計対象は3521件でした.なお,申請したものの実際にはサービスを利用していない方も少なくありませんが,今回の集計ではその点は考慮しませんでした.

構成員分類

以下のように単一選択で構成員分類を尋ねました.

  • 学生:86.11%
  • 教員(常勤):8.44%
  • 教員(非常勤):0.97%
  • 職員:3.78%
  • その他:0.71%

学生の割合が非常に高い結果となりました.サービス開始時点で常勤教職員はBing Chat Enterprise(現「Microsoft Copilot」)の利用が可能となっていたためそちらを案内していたという点の影響も考えられますが,自身あるいは研究費等での負担が不要であることのメリットが学生にとって特に大きかったと見られます.

学年・職名等

学年・職名等を自由記述で尋ねました.今回は,構成員分類を「学生」と回答した者について,生成AI (GPT-4) を用いて作成したプログラムで表記を正規化し(一部は手動で補正),集計しました.

  • 学部1年:11.84%
  • 学部2年:13.29%
  • 学部3年:14.35%
  • 学部4年:13.46%
  • 修士課程1年:15.73%
  • 修士課程2年:13.76%
  • 博士課程1年:6.00%
  • 博士課程2年:4.52%
  • 博士課程3年:3.86%
  • その他・特定できず:3.20%

2023年5月1日現在の学生数1では,学部生および修士課程の学生は1学年あたりおよそ3,100名,博士課程の学生は1学年あたりおよそ1,500名です.大まかな傾向としては,すべての学年の学生が同程度の割合で利用している,ということになります.

教職員についてのこの項目の集計は行いませんでした.

利用目的(選択式)

利用目的について,以下のように単一選択で「最もあてはまるもの」はどれか尋ねました.

  • 明確な目的はない(お試し):23.37%
  • 授業(学生として:たとえば授業内容に関連する学習など):23.89%
  • 授業(教員として:たとえば授業資料や試験問題の準備など):1.19%
  • 研究(たとえば文献の整理・翻訳など):49.47%
  • その他:2.07%

「研究」がおよそ半数を占め,残りの半数がさらに「授業(学生として)」と「明確な目的はない」の半々で分かれる結果となりました.

構成員分類および学年別のクロス集計を行ったところ,以下のようになりました(表は左右にスクロールできます).

学部1年学部2年学部3年学部4年修士課程1年修士課程2年博士課程1年博士課程2年博士課程3年学生(その他・特定できず)教員(常勤)教員(非常勤)職員その他(全体)
明確な目的はない 34.26%31.76%29.89%27.21%16.77%13.19%12.64%12.41%17.09%14.43%20.54%17.65%38.35%16.00%23.37%
授業(学生として) 50.70%55.58%54.71%19.61%14.26%4.80%2.20%3.65%0.85%18.56%0.00%0.00%0.00%4.00%23.89%
授業(教員として) 0.28%0.25%0.46%0.25%0.21%0.00%0.00%0.00%0.00%0.00%10.44%11.76%0.75%0.00%1.19%
研究 10.86%10.42%13.33%51.47%68.55%81.06%85.16%83.94%82.05%67.01%68.35%64.71%39.85%76.00%49.47%
その他 3.90%1.99%1.61%1.47%0.21%0.96%0.00%0.00%0.00%0.00%0.67%5.88%21.05%4.00%2.07%

学生について見ると,学年が上がることに授業・学習から研究に比重が移っていることが分かります.特に,学部4年生以上になると急激に研究の比率が高くなっています.また,「明確な目的はない」の比率も学年が上がるとともに低下しています.教職員は研究の比重が高いですが,職員は「明確な目的はない」「その他」も見られます(本サービスは「教育・研究」を目的として提供していたことから,「業務」は選択肢に含んでいません).教員であっても「授業(教員として)」を目的として選択した者の割合は高くありませんでした.

なお,このデータはあくまで利用開始の申請の際のデータであることから,その後に実際に利用した目的は異なっている可能性もあります.

利用目的(詳細の自由記述)

選択式に加え,自由記述でも利用目的を尋ねました.ここですべてを紹介することはできませんが,多く見られた内容としては,英語の翻訳あるいは校正・プログラミングの補助・論文の要約・ブレインストーミングといったものが挙げられます.

アンケートの集計結果

続いて,今回行った「生成AIの提供方針に関するアンケート」の集計結果を紹介します.

アンケートの実施概要

アンケートの実施(回答受付)期間は2024年3月8日(金)から3月18日(月)までで,回答総数は415件でした.Microsoft Formsを利用し,学内構成員(UTokyo Accountを持つ方)を対象に匿名で実施しました.

実施にあたっては,以下の通り回答の呼びかけを行いました.

  • 「生成AIチャットサービスの実験的な提供」の利用者に対するメール
  • AIに関するコミュニティ「UTokyo ARC」のSlackでの投稿
  • UTokyo Slackに設けている情報交換の場「UTokyo アゴラ」での投稿
  • 教職員向けにTeams上に設けている情報交換の場「ITツール利活用コミュニティ」での投稿

生成AIチャットを利用したことがない方も含めて広く構成員の方々を対象としていましたが,生成AIチャットの利用者やITツールに関するコミュニティに対して呼びかけを行ったため,生成AIについて関心のある方・利用経験のある方を中心にご回答いただきました.

構成員分類

以下のように単一選択で構成員分類を尋ねました.なお,学部2年生については,後期課程に内定していても「学生(学部前期課程)」を選択するよう指示しました.

  • 学生(学部前期課程):13.25%
  • 学生(学部後期課程):19.76%
  • 学生(大学院):42.17%
  • その他の学生(科目等履修生など):0.00%
  • 教員(常勤):12.77%
  • 教員(非常勤):0.24%
  • 研究員など:1.93%
  • 職員:9.64%
  • その他:0.24%

「生成AIチャットサービスの実験的な提供」申請フォームと比較すると,やや差異はありますが,全体としては同様の傾向が見られます.前出の申請フォームと比べるとアンケートでは職員の割合がやや高めですが,「生成AIチャットサービスの実験的な提供」は「教育・研究」を目的としていたことから,「生成AIチャットサービスの実験的な提供」を利用していなかった職員が一定数存在したものと考えられます.

なお参考までに,2023年5月1日現在の学生数1では,学部前期課程が6,647名,学部後期課程が7,327名,大学院が14,224名(いずれも研究生・聴講生等を除く)です.また,教職員数2は,常勤教員が4,008名,職員が5,524名(職域(時間)限定職員および特定有期雇用教職員を含み,特任研究員を除く)です.これら大学全体の構成員比率と比べると,一部にやや偏りはあるものの,回答者の比率と全体の比率は大きく離れてはいない値となっています.

学修・研究分野

「学修・研究している分野」を,以下のように単一選択で尋ねました.なお,学修・研究を行っていない方(事務職員の方など)については,「特になし」を選択するよう指示しました.

  • 情報科学や関連分野:23.86%
  • 自然科学系(情報科学や関連分野以外):49.16%
  • 社会科学系:8.43%
  • 人文科学系:5.54%
  • その他の学修・研究分野:3.86%
  • 特になし:9.16%

自然科学系が多数を占め,社会科学系や人文科学系は少数に留まりました.自然科学系で生成AIの活用が進んでいることを反映したものと見られますが,学内の構成員の比率とは異なっていることから,アンケートの分析にあたって留意すべき点と考えられます.

(参考)構成員分類とのクロス集計 構成員分類とクロス集計したところ,以下のようになりました(構成員分類で回答数が極端に少ないものは除いて示してあります).

学生(学部前期課程)学生(学部後期課程)学生(大学院)教員(常勤)研究員など職員(全体)
情報科学や関連分野 38.18%28.05%26.86%9.43%25.00%2.50%23.86%
自然科学系(情報科学や関連分野以外) 34.55%46.34%58.29%66.04%62.50%12.50%49.16%
社会科学系 9.09%18.29%5.14%9.43%0.00%2.50%8.43%
人文科学系 3.64%4.88%6.29%5.66%0.00%5.00%5.54%
その他の学修・研究分野 1.82%2.44%3.43%7.55%12.50%2.50%3.86%
特になし 12.73%0.00%0.00%1.89%0.00%75.00%9.16%

なお,単一選択に加えて自由記述でも学修・研究分野を尋ねましたが,ここでの紹介は割愛します.

生成AIチャットの利用経験

※このアンケートでは,「生成AIチャット」とは,東京大学が提供しているサービスのほか,ChatGPTやMicrosoftのCopilot (Bing Chat)・GoogleのGemini (Bard) などを含む一方,画像のみを対象とする生成AIなどチャット形式ではないものは含まないものとし,その旨を説明した上で質問しました.

生成AIチャットを利用したことがあるかどうか,利用したことがある場合はどの程度の頻度で利用しているか,について,以下のように単一選択で「最もあてはまるもの」はどれか尋ねました.

  • 利用したことがない:2.41%
  • 利用したことはあるが,日常的には利用していない:25.06%
  • 1~2週間に1度は利用している:23.86%
  • 数日に1度(またはそれ以上)の頻度で利用している:48.67%

「利用したことがない」はごく少数に留まりました.前述のように,アンケートの実施形態の関係上,回答者が生成AIについて関心のある者・利用経験のある者を中心に構成されている影響と考えられます.ただし,「利用したことはあるが、日常的には利用していない」「1~2週間に1度は利用している」の2つを合わせるとおよそ半数となり,必ずしも利用頻度が高くない回答者も一定数存在しました.

(参考)構成員分類とのクロス集計 構成員分類とクロス集計したところ,以下のようになりました(構成員分類で回答数が極端に少ないものは除いて示してあります).

学生(学部前期課程)学生(学部後期課程)学生(大学院)教員(常勤)研究員など職員(全体)
利用したことがない 0.00%0.00%2.29%1.89%12.50%10.00%2.41%
利用したことはあるが,日常的には利用していない 20.00%36.59%21.14%20.75%12.50%32.50%25.06%
1~2週間に1度は利用している 29.09%14.63%24.57%22.64%37.50%30.00%23.86%
数日に1度(またはそれ以上)の頻度で利用している 50.91%48.78%52.00%54.72%37.50%27.50%48.67%

「研究員など」と「職員」でやや利用頻度が低めな様子が見られます.一方,学生と教員の間や学生の所属課程間においては,学部後期課程でやや偏りが見られますが,全般的には差は限定的なようです.

(参考)学修・研究分野とのクロス集計 学修・研究分野とクロス集計したところ,以下のようになりました.

情報科学や関連分野自然科学系(情報科学や関連分野以外)社会科学系人文科学系その他の学修・研究分野特になし(全体)
利用したことがない 0.00%2.94%0.00%0.00%0.00%10.53%2.41%
利用したことはあるが、日常的には利用していない 15.15%26.96%34.29%26.09%25.00%31.58%25.06%
1~2週間に1度は利用している 21.21%23.53%14.29%30.43%31.25%34.21%23.86%
数日に1度(またはそれ以上)の頻度で利用している 63.64%46.57%51.43%43.48%43.75%23.68%48.67%

「情報科学や関連分野」では利用頻度がやや高め,「特になし」では利用頻度がやや低めです.それ以外の分野では大きな差はあまり見られませんでした.

「利用したことがない」と回答した者に対しては,以降「今後,機会があれば生成AIチャットを利用してみたいと思うか」等を尋ねましたが,対象者がごく少数であり学内の実情と乖離している可能性が否めないため,公表を控えます.以下の質問はそれ以外の選択肢を選択した405件を対象に尋ねたものです.

生成AIチャットの利用目的(選択式)

どのような目的で生成AIチャットを利用しているか(いたか)について,以下のように単一選択で「最もあてはまるもの」はどれか尋ねました.

  • 明確な目的はなく,お試しで使っている(使っていた):17.04%
  • 授業(学生として:たとえば授業内容に関連する勉強など):14.81%
  • 授業(教員として:たとえば授業資料や試験問題の準備など):1.73%
  • 研究(たとえば文献の整理・翻訳など):51.36%
  • その他:15.06%

前出の申請フォームと比べると,まず「その他」が増加している点が指摘できます(事務職員の業務利用が一因と考えられます).それに伴って「お試し」「授業(学生として)」が減少している一方,「研究」は減少していません.対象者などが同じでないため一概に比較はできませんが,実際に利用した結果,授業・学習に対して研究での利用が相対的に有用であった可能性も考えられます.

構成員分類とクロス集計したところ,以下のようになりました(構成員分類で回答数が極端に少ないものは除いて示してあります).

学生(学部前期課程)学生(学部後期課程)学生(大学院)教員(常勤)研究員など職員(全体)
明確な目的はなくお試しで 23.64%20.73%12.28%13.46%0.00%27.78%17.04%
授業(学生として) 47.27%34.15%3.51%0.00%0.00%0.00%14.81%
授業(教員として) 0.00%0.00%0.00%13.46%0.00%0.00%1.73%
研究 16.36%35.37%73.68%61.54%100.00%11.11%51.36%
その他 12.73%9.76%10.53%11.54%0.00%61.11%15.06%

学生に関して,学年が上がるにつれて授業・学習から研究にシフトしていく点は,申請フォームと同様でした.職員は「研究」ではなく「その他」が多数となりました(選択肢には含んでいませんでしたが,業務目的の利用と推測されます).

学修・研究分野とクロス集計したところ,以下のようになりました(構成員分類で回答数が極端に少ないものは除いて示してあります).

情報科学や関連分野自然科学系(情報科学や関連分野以外)社会科学系人文科学系その他の学修・研究分野特になし(全体)
明確な目的はなくお試しで 9.09%17.68%31.43%17.39%6.25%26.47%17.04%
授業(学生として) 22.22%11.11%14.29%17.39%18.75%11.76%14.81%
授業(教員として) 1.01%1.52%5.71%4.35%0.00%0.00%1.73%
研究 54.55%61.11%34.29%39.13%62.50%5.88%51.36%
その他 13.13%8.59%14.29%21.74%12.50%55.88%15.06%

「明確な目的はなくお試しで」と回答した者の割合が,「情報科学や関連分野」では低く,社会科学系・人文科学系では高いことが分かります.回答者全体の学修・研究分野の比率(生成AIを利用している割合・生成AIに関心がある方の割合)とも関連があるように見受けられます.この内容から確実な結論を出すことはできませんが,生成AI技術に近い情報科学などの分野では生成AIに関する最新情報や使い方などのノウハウに接する機会が多く,結果として生成AIの利用が進み,具体的な目的を持って使っているケースも多くなっている,といった状況が生じている可能性も考えられます.

生成AIチャットの利用目的・成果(詳細の自由記述)

生成AIチャットを利用した事例について

  • どのような目的で利用したか
  • どのサービスやモデルを利用したか(ChatGPTかAPIか,GPT-3.5かGPT-4か,など)
  • どのような内容(プロンプト)を入力したか,その際の工夫は何か
  • 目的をどの程度達成できたか
  • 生成AIチャット以外に組み合わせて使ったツールはあるか

などを自由記述で回答するよう求めました.

ここですべてを紹介することはできませんが,多く見られた内容としては,申請フォームと同様,英語の翻訳あるいは校正・プログラミングの補助・論文の要約・ブレインストーミングといったものが挙げられます.

今後の生成AIチャットの利用について

今後,生成AIチャットを引き続き利用するつもりかどうか,以下のように単一選択で尋ねました.

  • 利用するつもりである:93.83%
  • どちらとも言えない・分からない:5.93%
  • 利用するつもりはない:0.25%

既に利用をやめた者が回答していない可能性も考えられますが,「利用するつもりである」がかなり高い割合を占めました.

「どちらとも言えない・分からない」「利用するつもりはない」と回答した者に対しては,追加でその理由を尋ねましたが,対象者がごく少数であり学内の実情と乖離している可能性が否めないため,公表を控えます.

生成AIチャットの利用サービス・形態

利用している(していた)生成AIチャットが以下のサービスや利用形態のうちどれに該当するか,複数選択式で当てはまるものをすべて選択するよう求めました.

※3番目の「業務改革×AIプロジェクト」は一部の職員向けに別途案内して実施していた取り組みです.

このほか,複数の選択肢の組み合わせに関する集計をいくつか紹介します.

  • 「生成AIチャットサービスの実験的な提供」と「Microsoft Copilot」の双方を利用していた人:14.07%
    • 「生成AIチャットサービスの実験的な提供」の利用者のうち20.58%に当たります.
    • 「Microsoft Copilot」の利用者のうち79.17%に当たります.
  • 東京大学が提供している3種類の生成AIチャットについて
    • いずれか1つでも利用していた人:73.09%
    • いずれも利用していなかった人:26.91%
  • 東京大学が提供している3種類の生成AIチャットをいずれか1つでも利用していた人のうち
    • 「有料の生成AIチャットサービス(個人で支払い)」を利用していた人:19.26%
    • 「有料の生成AIチャットサービス(研究室等で支払い)」を利用していた人:7.09%
    • 支払い形態を問わず有料の生成AIチャットサービスを利用していた人:25.00%
    • 「無料の生成AIチャットサービス」を利用していた人:62.50%
    • 東京大学以外の生成AIチャットサービスをいずれも利用していなかった人:26.69%
  • 東京大学が提供している3種類の生成AIチャットをいずれも利用していなかった人のうち
    • 「有料の生成AIチャットサービス(個人で支払い)」を利用していた人:35.78%
    • 「有料の生成AIチャットサービス(研究室等で支払い)」を利用していた人:8.26%
    • 支払い形態を問わず有料の生成AIチャットサービスを利用していた人:43.12%
    • 「無料の生成AIチャットサービス」を利用していた人:64.22%

東京大学が提供している生成AIチャットの利用率は4分の3近くとなりましたが,前述のアンケートの実施形態の関係上,学内全体の実態よりも高めに出ていると考えられます.東京大学以外の有料の生成AIチャットサービスを利用していた人は4分の1を超え,一定の数に上りました.

東京大学が提供している生成AIチャットを利用していた人と利用していなかった人で比べると,東京大学が提供している生成AIチャットを利用していた人の方が,有料の生成AIチャットサービスを利用していた割合が小さいという結果になりました.母比率の差の検定(独立性検定)を行ったところ p = 0.0004 となり,有意性が認められます.東京大学が提供している生成AIチャットを利用したことで有料の生成AIチャットサービスを契約せずに済んだ,あるいは,有料の生成AIチャットサービスを契約していない人でも東京大学が提供している生成AIチャットによって高度なモデルやデータの保護を備えた生成AIチャットを利用できた,と解釈することができます.

構成員分類とクロス集計したところ,以下のようになりました(構成員分類で回答数が極端に少ないものは除いて示してあります).

学生(学部前期課程)学生(学部後期課程)学生(大学院)教員(常勤)研究員など職員(全体)
東京大学の「生成AIチャットサービスの実験的な提供」 72.73%69.51%71.35%61.54%85.71%50.00%68.40%
東京大学の「Microsoft Copilot」 12.73%13.41%15.20%28.85%14.29%30.56%17.78%
東京大学の「業務改革×AIプロジェクト」 1.82%1.22%1.17%1.92%14.29%25.00%3.70%
有料の生成AIチャットサービス(個人で支払い) 20.00%21.95%29.82%21.15%0.00%13.89%23.70%
有料の生成AIチャットサービス(研究室等で支払い) 5.45%3.66%5.26%25.00%14.29%2.78%7.41%
無料の生成AIチャットサービス 67.27%67.07%61.40%61.54%85.71%52.78%62.96%

「有料の生成AIチャットサービス(個人で支払い)」を利用している割合について,大学院の学生で4分の1を超え最も高い値となりました.また,学部の学生でも20%程度は個人で支払いをして有料の生成AIチャットサービスを利用しています.その一方で,常勤の教員も一定数は個人で支払いをしていますが,研究室等で支払いをして有料の生成AIチャットサービスを利用している割合の方が高くなっています.個人で支払っている分がすべて大学での学習・研究のためのものではないと考えられますが,学生の自己負担が生じている可能性が示唆されます.

さらに詳しく見るため,支払い形態を問わず有料の生成AIチャットサービスを利用している者の割合を,構成員分類と利用目的の組み合わせごとに集計しました.

学生(学部前期課程)学生(学部後期課程)学生(大学院)教員(常勤)研究員など職員(全体)
明確な目的はなくお試しで 15.38%11.76%9.52%(14.29%)0.00%10.14%
授業(学生として) 19.23%21.43%(33.33%)21.67%
授業(教員として) (57.14%)57.14%
研究 (66.67%)31.03%38.89%46.88%14.29%(25.00%)38.94%
その他 (14.29%)(37.50%)22.22%(50.00%)22.73%26.23%
(全体) 25.45%24.39%33.33%44.23%14.29%16.67%29.88%

※括弧書きは該当者の数が10名未満の組み合わせです.

大学院の学生はもとより多数が研究を目的とした利用ですが,他の目的と比較しても高めの値となっており,研究のために有料の生成AIチャットサービスを利用している可能性は否定できないように見受けられます.

(参考)利用目的とのクロス集計 利用目的とクロス集計したところ,以下のようになりました.

明確な目的はなくお試しで授業(学生として)授業(教員として)研究その他(全体)
東京大学の「生成AIチャットサービスの実験的な提供」 66.67%73.33%71.43%70.67%57.38%68.40%
東京大学の「Microsoft Copilot」 11.59%21.67%42.86%17.31%19.67%17.78%
東京大学の「業務改革×AIプロジェクト」 5.80%5.00%0.00%0.96%9.84%3.70%
有料の生成AIチャットサービス(個人で支払い) 8.70%20.00%28.57%29.81%22.95%23.70%
有料の生成AIチャットサービス(研究室等で支払い) 1.45%1.67%42.86%11.06%3.28%7.41%
無料の生成AIチャットサービス 65.22%68.33%71.43%59.13%67.21%62.96%

「明確な目的はなくお試しで」利用している者は,有料の生成AIチャットサービスを利用している割合が低い,という結果となりました.

「生成AIチャットサービスの実験的な提供」以外のサービスとの併用について

東京大学の「生成AIチャットサービスの実験的な提供」を利用していた者に対して(対象者数307名3),それ以外の生成AIチャットを利用していたかどうか,利用していた場合はそれぞれをどれくらいの割合で利用していたか,を以下のように単一選択で尋ねました.

  • 他の生成AIチャットは利用せず,もっぱら「生成AIチャットサービスの実験的な提供」を利用していた:14.33%
  • 他の生成AIチャットも利用していたが,「生成AIチャットサービスの実験的な提供」を中心に利用していた:17.26%
  • 他の生成AIチャットと「生成AIチャットサービスの実験的な提供」の両方を同じくらい利用していた:23.45%
  • 他の生成AIチャットを中心に利用していた:44.95%

「他の生成AIチャットを中心に利用していた」と回答した者が半数近くと高い割合に上る一方,他の生成AIチャットを利用していなかった者は少数に留まりました.

「生成AIチャットの利用サービス・形態」の項目において,有料の生成AIチャットサービスを(支払い形態を問わず)利用していたと回答したかどうか,によって区分して集計したところ,以下のようになりました.

有料サービスの利用あり有料サービスの利用なし(全体)
他の生成AIチャットは利用せず 20.18%0.00%14.33%
「生成AIチャットサービスの実験的な提供」中心 22.02%5.62%17.26%
同じくらい 21.56%28.09%23.45%
他の生成AIチャット中心 36.24%66.29%44.95%

有料の生成AIチャットサービスを自身あるいは研究室等で契約している者は,そちらを中心に利用している,という状況が分かります.また,有料の生成AIチャットサービスを契約していない場合でも,「生成AIチャットサービスの実験的な提供」を中心に利用していた者は少数に留まり,大学のサービスが補助的に利用されていた様子が窺えます.他の自由記述の項目では,サービスの利用上限が厳しく思うように使えなかった旨の回答が見受けられたため,この点は要因の一つと考えられます.費用負担の問題は決して小さくはありませんが,生成AIチャットの利用環境を整備していくにあたり,使用量の制約が厳しくなりすぎないように考慮する必要性があるかもしれません.

「Microsoft Copilot」への移行について

東京大学の「生成AIチャットサービスの実験的な提供」を利用していた者に対して,全構成員に対してMicrosoft Copilotによる生成AIチャットの提供を開始したこと,「生成AIチャットサービスの実験的な提供」について運用負担や費用負担などの観点で課題があることを説明した上で,Microsoft Copilotが利用できれば「生成AIチャットサービスの実験的な提供」が終了しても問題ないと思うかどうか,以下のように単一選択で尋ねました.

  • 問題ないと思う:61.56%
  • どちらとも言えない・分からない:29.32%
  • 問題があると思う:9.12%

明確に「問題があると思う」と回答した方の割合は高くなかった一方,「どちらとも言えない・分からない」と回答した方は一定数見られる,という結果になりました.

「Microsoft Copilot」の問題点

前の質問で「問題があると思う」または「どちらとも言えない・分からない」と回答した者に対して,「Microsoft Copilot」ではどのような点が不十分である,あるいは問題があると思うか,自由記述で尋ねました.

ここですべてを紹介することはできませんが,たとえば,Microsoft Copilotを使用したことがない・少ないため不安である,性能が同等であるかはっきりしないこと,画面が表示されないなど挙動が不安定であること,などの意見が寄せられました.

その他

以上のほか,生成AIチャットに関しての意見や感想などを自由に記入できる項目を設けました.

ここですべてを紹介することはできませんが,いくつか例を挙げると,「生成AIチャットサービスの実験的な提供」は利用上限が少なく思うように使えなかった,Claude 3など他の生成AIチャットも提供してほしい,論文などにおける不適切な利用に懸念がある,生成AIの使い方をもっと知りたい,といった意見が寄せられました.

まとめ

以上の内容から,重要と思われる点をあらためてまとめると,次のようになります.

  • 東京大学で生成AIチャットを利用している学生・教員は,研究を目的として利用しているケースが多い.
  • 東京大学が提供している生成AIチャットを利用していた人と利用していなかった人で比べると,東京大学が提供している生成AIチャットを利用していた人の方が,有料の生成AIチャットサービスを利用していた割合が小さい.
  • 東京大学が行ってきた「生成AIチャットサービスの実験的な提供」は,他の有料・無料の生成AIチャットサービスと組み合わせて利用されており,補助的な位置付けで利用していた人も少なくなかったと思われる.
  • 有料の生成AIチャットサービスを利用している人は,研究室等ではなく個人で支払いをしている人が多い.ただし,教員では個人での支払いより研究室等での支払いの方が割合の方が高い.
  • 「Chatbot UI」からMicrosoft Copilotへの移行は,全体としては問題ないという意見が多いが,懸念点も指摘されている.

アンケートにご協力いただきました皆様にあらためてお礼を申し上げます.しばらくは「当面の全学構成員向け生成AIサービス提供方針について」で示した運用を行いますが,本アンケートの結果も踏まえ,今後も生成AIの利用環境の整備について引き続き検討していきます.

Footnotes
  1. https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/students/edu-data/e08_02_01.html 2

  2. https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/overview/b02_03.html

  3. Microsoft Formsの機能の制約上,上の「生成AIチャットの利用サービス・形態」の質問とは別に「生成AIチャットサービスの実験的な提供」の利用有無を単体であらためて尋ね,それをもとに分岐したため,値が一致しません.なお,不一致の94%は,上の質問では「生成AIチャットサービスの実験的な提供」を選択していない一方で,「生成AIチャットサービスの実験的な提供」の利用有無を単体で尋ねた際に利用していたと回答し,かつこの質問に「他の生成AIチャットを中心に利用していた」と回答していたものでした.「生成AIチャットサービスの実験的な提供」をほとんど利用しておらず,そのために上の質問では選択しなかった,というケースであると推測されます.

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