開催趣旨
2022年暮れにChatGPTがデビューして以来、生成AIが人類に与える影響について様々な議論がされています。大学でも教育に、研究に、業務に大きな影響を与えることは必須であり、その影響には正負両方の側面があることもまた共通の認識になっています。生成AIは教材作成などで生かして教育を効率化させることもできますし、生成AIの利用を前提として学生の到達地点を上げる(深化させる)こともできるかもしれない一方で、チートや、それを見破ることが困難であるという心配もあります。教員の側でこれまでと同じ方法で教育をし、同じ課題で評価をしていても、学生は教育や課題への取り組み方を変えているかもしれません。教育内容や手法によっては、AIを利用して達成目標を上げることができるかもしれない一方で、安易な利用によって学生の努力・得られる学びが劣化しているという可能性もありますし、達成感、モチベーションが失われるというリスクもあります。長期的な影響がどのようなものになるかは未知です。そのようなことについて、ChatGPTデビュー直後は多くの先生が多くの場面で話題にしたと思われますが、あれから2年が立ち、これまで東大で各教員がどのように自分の授業の中でAIを位置づけたのか、AIの利用についてどのように学生に伝えたのか、授業準備や授業の中でどう活用したか、学生の行動・レポート・成績には見るべき変化があったか、などの情報は必ずしも広く共有されていないのではないでしょうか。そこでこのシンポジウム+ワークショップを、東大の教員の間で現場レベルの情報共有・今後へ向けた議論することを目指して企画いたしました。前半のシンポジウム(講演)部はどなたでも参加でき、矢谷浩司准教授(工学系)から、生成AIと共にどう高次思考を育むかについて講演いただく他、本ワークショップの企画・実行を行った総長補佐グループによる学内外・国内外の調査を共有します。後半のワークショップは東大教職員で本音で議論することを意図しています。
内容
- 日時: 2024年12月20日(金) 13:00-16:00
- 場所: オンライン (Zoom) 開催
- 前半 シンポジウム: (13:00-14:00) どなたでも参加できます
- 矢谷浩司 准教授(工学系研究科)による特別講演:“What Do People Feel When Working with Generative AI? --- Perspectives from Human-AI Interaction Research” (in English) (「生成AIと共に知的作業を行う際に人は何を感じるか? 〜Human-AI Interaction研究の視点から〜」 英語による講演) 講演資料
- 実行委員会総長補佐グループ(講演者:山﨑俊彦 教授(情報理工学系研究科)):「学内外・国内外の最新動向や事例共有」
- 後半 ワークショップ: (14:00-16:00) 東大教職員のみ対象
- ブレイクアウトルームでの議論: 担当する授業(分野や形式)などでグルーピングをし、グループごとに議論(詳細後述)
- 全体での発表と意見共有: ブレークアウトルームでの議論を共有し、更に議論(詳細後述)
後半 ワークショップについて
多様なテーマで生成AIに関するシンポジウムが開催されている中、本企画は「様々な分野で教育に活かせる実践的な情報共有から、AIの存在を踏まえた教育の内容、目標に関する議論まで」をテーマとし、携わっている教育に関して、情報共有や議論を行うことを目的としています。本音での議論を行えるように、東大教職員限定で行います。例えば次のような話題を取り上げ、議論していただくことを意図しています。
- 各分野での授業実践方法: 様々な分野・授業形式での生成AI活用例、改善点
- 生成AIの活用と制限の線引き: 学生にどのような場面で生成AIを使うべきか、または使用を制限すべきか
- 学生への伝え方: 生成AI利用について学生への伝え方
- 生成AIの活用が難しい課題設定: AIが解きにくい課題の工夫、チート対策
- 分野の教育目標: 生成AIの存在が前提となる中、各分野での教育目標について考え直す、問い直す
- 組織で取り組むべきこと(短期): 学生の教育環境やガイドライン制定などに関する提言
- 組織で取り組むべきこと(長期): 教育への長期的な効果・(正負の)影響調査のために大学や分野として取り組むべきこと
このシンポジウムとワークショップでは、単に知識を得るだけでなく、同じ学生に教える者同士、あるいは類似の授業や課題に取り組む教員同士で、具体的な経験や教授方法を共有しながら、生成AIをめぐる教育方法の見直しや新たな指針を見出すことを目指しています。
参加申込
- こちらの参加申込ページから登録して下さい。
- 当日まで申込可能ですが、ワークショップにおけるグルーピングを事前に行うために、なるべく
12月2日(月)12月9日(月) までに登録をお願いします。それ以降も申込み・ワークショップへの参加は可能ですが、早めの登録にご協力下さい。ご都合により一部のみの参加も可能です。 - 本件連絡先: 情報システム部情報支援課
- Email: systemshien.adm@gs.mail.u-tokyo.ac.jp
参加者用ページ
- 登録後、参加者用ページ (要UTokyo Accountでサインイン) からZoomリンクなど必要な情報をご覧ください。
- (学外の方など)閲覧が不可能または困難な場合は上記までご連絡ください。
生成AIに関する意見調査(匿名投票)
https://pol.is というシステムを使い、生成AI(ChatGPT)を、様々な場面で研究者・学生が使うことに関する27個の文章が次々とあらわれますので、「賛成」「反対」を投票していただき、皆様のご意見を伺いたいと思います。投票は匿名で、ご参加いただかない方も可能です。回答分布などの結果は当日報告します。「https://pol.is/5fthebfuue」から投票ください。どうぞよろしくお願いします。
実行委員より一言
本シンポジウム+ワークショップは2024年度総長補佐会で生成AIと教育について議論した理事・執行役・総長補佐のグループ(以下のメンバー)で企画・実行しました。
- 教育というのは、「教わる」ことと「教える」こととの相互作用によって成り立ちます。その実践のなかで、「教わる」側にも「教える」側にも「学び」が生まれます。このワークショップは、生成AIと教育について、「教える」側から実情を把握するとともに、そこにおいて「教える」側が得られる、また現に得てきた「学び」を共有することを目的としています。 --- 森山工(理事・副学長・総合文化研究科)
- 生成AIは猛スピードで進化しています。生成AIは便利であるものの、使い方によっては誤りやバイアスが生じてしまい、まずい状況にも陥りがちです。教育現場でも、各個人が使用していることを前提に活用方法を考えて、工夫していかねばならない状況になりました。本シンポジウム&ワークショップでは、このような悩みを共有し、新たな気付きを得る機会にしたいと考えております。是非、ご参加いただきますようお願い申し上げます。 --- 浅見泰司(執行役・副学長・工学系研究科)
- 自分がやっている(情報分野の)授業と生成AIについては、当初こそいろいろなことを考えましたが良くも悪くも、一周して元の場所にいるという感じで「AIにやらせる意味のない課題」と「AIにはできない(と自分では思っている)課題」を中心にやっているつもりですが、学生の学びに何が起きているのか、真実はわかりません。生成AIについて特段の方法や考え方を編み出されている先生も、そうでない(私のような)先生も一緒に、同じ学生をともに教育している教職員として、本音で議論ができればと思いこのワークショップを企画しました。ご参加の先生方と議論できることを楽しみにしています。これを読んでいる皆様も、自分の所属学科・専攻での議論のきっかけとして、あるいは所属をまたいで似た分野の先生と議論をする、違う分野の先生の考えを聞く機会として、ぜひご参加下さい。 --- 田浦健次朗(執行役・副学長・情報理工学系研究科)
- 生成AIの活用効果とその問題点について、日々、研究者の視点から学びつつも、いざそれを教育の現場に持ち込もうとするときに、様々な困難に直面しています。生成AIをどの程度まで学生たちに使わせて良いのか。その活用によって、学生たちの能力は伸びているのか、収縮しているのか。教育の現場で日々迷っていることを、教職員同士でゆっくりと議論できるこの機会に、ご参加される皆様と実践知の共有をしたいと考えています。--- 田中東子(総長補佐・情報学環)
- 教育においては、これまで「他人の力を借りる」ことが不正であると言われていたのが、生成AIの登場により「疑似的な他人」の力を借りることが公然と可能となりました。その中で自分を見失わずに高めていくのが教育となり、これは、学習過程、評価ともに大きくパラダイムが変わることになると思われます。一方で生成AIによって、大量の情報を作業が効率的に扱うことが可能となり、それを研究や世の発展のために生かしていかない手はありません。このバランスをどのようにとっていくのかを、多様な先生方の観点を知る機会として活用いただければと思います。 --- 東尚弘(総長補佐・医学系研究科)
- 多くの教員はご自身では生成AIを活用しつつも,「生成AIを初学者の学生が利用すべきでないと思われる課題」に対して,どう対応すべきかお悩みではないでしょうか?私は,例えば1)プログラミング教育における懸念:初学者が生成AIを過度に利用することで,デバッグ能力が十分に育たない問題や,2) 大学院生の英文論文読解能力の養成に関する懸念:論文サーベイの段階において,生成AIに頼ることにより英文読解能力が十分に養われない問題などを,日々悩んでいます。このような現場レベルの教員の悩みを共有し,何らかのヒントが得られる場にしたいと考えています。--- 藤本博志(総長補佐・新領域創成科学研究科)
- 私自身、様々な事例や多様なご専門の先生方のご意見を伺うことで、生成AIと教育・研究の関わりについてより理解が深まり、多面的な思考ができるようになったと感じます。本ワークショップはそれをもっと拡大して、教職員の皆様で議論をし、他の方の意見を聞くことのできる場とできれば良いなと考えています。 --- 山﨑俊彦(総長補佐・情報理工学系研究科)
- 私は、仕事や日常生活の中でも生成AIをほとんど活用していません。従来のやり方に慣れすぎており、またAIについてもよくわからないため、AIを使うことになかなか踏み切れません。私のように生成AIに慣れていない、よくわからない方にもお気軽に参加していただき、一緒に悩みや情報共有ができることを楽しみにしています。 --- 李正連(総長補佐・教育学研究科)